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特別受益

 相続人の中に被相続人の生前に被相続人から贈与をうけた人がいる場合、この 人が他の相続人と同じ相続分を受けるとすると不公平になる場合があります。
そこで、その贈与を相続財産の前渡しとみなして各人の相続分を計算し直しま す。計算上、その贈与を相続財産に加算して相続分を算定します。その贈与を  「特別受益」と呼びます。

 ある生前贈与が特別受益にあたるかはその生前贈与が相続財産の前渡しにあた るか否かによって個別具体的に判断されることになります。生前贈与で思い当 たるものといえば、結婚のための持参金や支度金、大学等の入学金や授業料等 の学資などがイメージできます。

 まず、結婚のための持参金や支度金はどうでしょうか。一般的には特別受益に なるものと思われます。ただし、金額が少なく、扶養の範囲内と認められる場 合には特別受益にはならないと考えられます。

 次に学資はどうでしょうか。これについては被相続人の生前の資力や社会的地位 などを考慮して判断されます。
 私立の医科歯科大学の入学金のように特別高額なものはまず特別受益とみてい いと考えます。それと異なり、公立の高等学校の授業料のようなものは親の子 に対する扶養の範囲内とみなされることがあります。

 また、この特別受益が問題となるものに相続人の中の一人だけが受取人とされ る死亡保険金があります。原則としてこの死亡保険金は特別受益とはなりませ んが、他の相続人との間に生じる格差が著しい場合には例外的に死亡保険金が 特別受益とされる場合があります。

 この特別受益を受けたとして持ち戻し(計算上、相続財産に加算することをこ う言います)をする必要のある人は相続人に限られます。
 ただし、代襲相続の場合において被代襲者(被相続人の生前に死亡した人の ことをこう言います) が生前に被相続人から受けた生前贈与は代襲相続人(被代襲者の子。被相続人 から見ると孫)が特別受益を受けたことになります。(したがってこの場合、 持ち戻しをする必要があります。)

 この特別受益を金額を計算するにあたって考慮しなければいけない重要なこと があります。先に出てきた寄与分にもあてはまることなのですが、それは貨幣 価値の変動についてです。生前贈与を受けた時から相続開始(被相続人の死亡) までには相当な年数が経っている場合がありまして、例えば同じ100万円で も昭和3 6年の100万円と平成2 3年の100万円ではその購買力に相当な 差があります。
 この場合は昭和3 6年の100万円が平成2 3年にはいくらの 価値があるかどうかによって特別受益の金額を計算します。価値の算出には消 費者物価指数が用いられることになります。