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遺言の撤回

 一度書いた遺言であっても、その遺言は新たに遺言を作る等することにより自 由に撤回することができます。撤回する権利を放棄することはできません。
 法律上撤回とみなされるケースは4つあります。

 1つ目は前の遺言と抵触する 遺言を新たに作成したときです。この場合は常に一番最後の遺言が有効となり ます。次に、2つ目は遺言者自身が遺言書を任意に破棄した場合です。3つ目 は遺言者自身が遺言の内容と抵触する財産の生前処分をした場合です。そして、 4つ目は遺言者自身が遺贈の目的物を故意に破棄した場合です。この4つが法 定撤回と呼ばれます。

 一度撤回された遺言はそれを撤回する遺言が撤回されたとしてもその効力を回 復しないことになっています。つまり、平成3年に作成した遺言を平成1 3年 に作成した遺言によって撤回しかとします。その後、平成2 3年に作成した遺 言によってその平成1 3年に作成した遺言を撤回したとします。この場合、平 成3年に作成した遺言は効力を回復しないということです。(ただし、詐欺や 強迫によって遺言が撤回された場合は例外的に効力を回復する場合がありま す。)

 元の遺言とそれを撤回する遺言はそれぞれ同一の種類でなくても大丈夫です。 つまり、公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することができます。
 一般的な撤回のルールを書きましたが、実際上はそんなに単純なものではなく 本当に撤回したのか否かの解釈が分かれるケースが多々あります。例えば、上 記の法定撤回の2つ目の場面に遺言者自身が遺言書を任意に破棄したケースが 出てきましたが、破棄ではなく遺言書の文言の一部を墨で塗りつぶすなどした 場合は撤回に当たるのか否かのケースなどがあります。結論から言いますとこ の墨で塗りつぶしたケースでは撤回に当たると判断されました。

 同じく法定撤回の4つ目の場面に遺言者自身が遺贈の目的物を故意に破棄した ケースが出てきましたがこれは文言どおり「遺言者自身」が「故意」で破棄し なければならず、第三者が破棄した場合は法定撤回に当たらず、受遺者が損害 賠償請求権を取得するとされた例があります。

 遺言の撤回に理由の如何は問われません。理由の如何にかかわらず自由に撤回 することができます。
 問題になるのは死因贈与契約が撤回できるか否かという点ですが、一見、契約 である以上、一方当事者からの撤回はできないと解されがちですが、死因贈与 契約は特殊な契約で、遺言の撤回の規定が死因贈与契約にも準用されるという 判例があります。

 したがって、贈与者が生前に死因贈与契約を自由にいっでも 撤回することができることになります。ただ、負担付死因贈与契約のケースで、 受贈者が負担の全部を履行した場合には、原則として死因贈与契約の撤回は認 められないという判例があります。